「知識社会がもたらした分断の結果」
さて、今回は「上級国民/下級国民」がどのように生まれたのか、またなぜ「そのような分断が生まれたか?」のといったことについて書かれている本を紹介します。
本のタイトルは『上級国民/下級国民』です。
著者は「橘玲(たちばなあきら)」さんです。以前から橘玲さんの考えに共感しているため、紹介の頻度が高いです。
2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』が30万部を超えるベストセラーに。06年『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。
Amazonの紹介ページより抜粋
より深く知りたい方は、著者本人のWebサイトで紹介がありますのでそちらを参照ください。
書籍の紹介
さて、あなたは次のようなことを思ったりしてないでしょうか?
- こんなにITが発達したのに日本の仕事の生産性が上がっていないのはなぜだろうか?
- なぜ日本は2018年から働き改革が進みだしたのか?
- 今後日本はどうなっていくのか?
これらの疑問を教えてくれるのが『上級国民/下級国民』です。
その他にも「モテ/非モテ」や「日本以外の国」など様々な内容があり、現在の社会で取り扱われている「分断」について知ることができて面白いと思わせるそんな一冊です。
この本の構成は3つのパートとエピローグに分かれて書かれています。
本の構成
- PART1 「下級国民」の誕生
- PART2 「モテ」と「非モテ」の分断
- PART3 世界を揺るがす「上級/下級」の分断
- エピローグ 知識社会の終わり
本の内容をざっくり話すと次のような流れで書かれています。
- 下級国民が生まれた背景として、日本の平成時代に起こったこととと、令和で起こることについて
平成:なぜ日本のGDPが急落したのか、IT投資が上手くいかなった理由など
令和:確実に起こる未来の予想、なぜ働き方改革が進んだのか - 「モテ」と「非モテ」の分断がどのようにして起こるのか
- 世界でも同じように「上級国民/下級国民」の分断が起きている
この各項目の内容を読んだ上で今の日本の社会の問題や、今後どうなっていくのか?そうなった時に自分はどうするのか?を考えてみるのは必要なのかなと思います。
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本の中でもっとも興味が湧いた点2つ
『上級国民/下級国民』で自分がもっとも興味が湧いた点2つ説明します。
- 日本の仕事の生産性が低いのは、IT投資が低いわけではない
- 2040年までに起こること
日本の仕事の生産性が低いのは、IT投資が低いわけではない
一つ目の興味が湧いて点です。
「日本の仕事の生産性が他の先進国に比べて低い」というのは言うまでもない事実ですが、なぜ生産性が低いのか?といった答えの一つとして言われているのが「ICT(情報通信技術)を効果的に活用できていない」ことだと言わてれいます。
そう言える理由としては、アメリカでは1990年代にIT革命によって生産性を加速させた実績がありますが、日本経済ではそもそもIT革命自体が生産性に効果を発揮していないそうです。
だとしたら「IT投資しなかったのでは?」と考えるのが普通ですが、実は日本の研究開発支出対GDP比率(2016年)は3.42%で、G7諸国ではもっとも高いそうです。
そのため「IT投資が低いわけではない」ということです。
じゃあなぜIT投資が効果を発揮していないかというと本書によると次のように書かれています。
IT革命が到来して、アメリカでは、これまで会社内で行われてきた業務がアウトソースされるようになりました。こうして生産活動の一部が効率的な国内外のサービス供給者に集約され、経済全体の生産性が上昇したのです。
ところが、日本では雇用対策を優先したため、社員の仕事を減らすような業務のアウトソースができず、子会社や系列会社をつくって社内の余剰人員を移動させるとおいう対応がしばしば行われてきました。しかしこれでは、個別の企業にとっては労働コストの削減にはなりますが、経済全体の生産性上昇にはつながりません。
さらにアメリカでは、ソフトウェアを導入するにあたって安価なパッケージソフトで済ませ、組織改革や労働者の訓練によって、会社の仕組みをソフトウェアに対応させようとしました。
それに対して日本では労働組合が抵抗する組織改革や社員の訓練を避けるため、ソフトウエアを会社に対応させようとして、高価なカスタムソフトウェアを導入することになりました。
こうして日本では、ITの導入が組織の合理化や労働者の技術形成をもたらさず、割高な導入コストや、異なったソフトウェアを導入した企業間の情報交換の停滞も相まって生産性の停滞を引き起こしたというのです。
なるほど。
たしかに、自分もIT業界にいるから実感としてるのですが、日本の会社のソフトって既製品だけだと今の業務と入れ替えれないから、ベンダーに頼んで無理矢理作り込ませるんですよね。
これって当たり前のことだと思ってたんですが、それが逆にソフトウェアの開発コストが上がって利益を削ってるってことだったんですね。
だとすると、日本企業の生産性を上げるためには、今ある既製品のソフトに業務を対応させるってことが大事ですね。
あとは人材をリストラできる仕組み。これは難しそうだな。
まとめると、こうなります。
・生産性を上げたいなら変えるべきはソフトではなく人間の方
2040年までに起こること
続いて二つ目の興味が湧いた点「2040年までに起こること」です。
皆さんは2040年に日本の高齢者の数は人口の何%だと思いますか?
次の総務省の資料によると65歳以上の割合が「35.3%」になります。10人に3,4が高齢者になるという数字です。
2040年頃までの全国人口見通しと 近年の地域間人口移動傾向
ちなみに現在(2021年)では「29.1%」という割合になってますので、あと約20年で「6.2%」もの65歳以上が増える計算になります。
次の図を見てもらうとわかるのですが、年々高齢者比率が上がり続けています。
増加の原因は団塊世代の年齢が上がっていることにあります。
2040年頃までの全国人口見通しと 近年の地域間人口移動傾向より抜粋
そして「2040年までに起こる」こととして、著書では次のように書かれています。
平成が「団塊世代の雇用(正社員の既得権)を守る」ための30年だったとするならば、令和の前半は「団塊世代の年金を守る」ための20年になる以外にありません。
「平成が「団塊世代の雇用(正社員の既得権)を守る」ための30年だったとするならば」という話しについて簡単に話すと、日本経済が停滞した30年は団塊世代の雇用を守るために色々費やした期間です。(例えば、非正規雇用の増加とか、ITを入れて人材削減しようとしたけど労働組合のおかげでできなかったとかです)
団塊世代とは1947年~1949年に生まれた第1次ベビーブームの世代のことで出生数は合計805万7000人です。(平均すると1年で約268万6千人)
2020年の出生数は84万832人ですので、約3倍以上になります。
その団塊世代がちょうど働いていた平成の30年(1990年代~)は、一番働き盛りであったため雇用を守ることを優先していたという話しです。
- 団塊世代の年齢(例:1947年生まれ)
年齢 西暦 和暦 0歳 1947年 昭和22年 20歳 1967年 昭和42年 42歳 1989年 平成元年 60歳 2007年 平成19年 65歳 2012年 平成24年 72歳 2019年 令和元年 93歳 2040年 令和20年
そしてこれから20年で起こるのが団塊世代の年齢を見てもらえるとわかるんですが、社会保障(年金・医療・介護)を守る時代に突入したということです。
なぜ社会保障を守るのかというと、今日本で一番政治の票を持っているのが高齢者だからです。
そのため、政治家は高齢者に都合の良い政策しか行いません。
だってそうですよね?
高齢者に都合の悪い政策をやろうとしても当選しないのでは政策を実行することもできないからです。
だから、今後20年は年金保険料や介護保険料の引き上げが起こると考えられます。
個人的に思ったことは、このまま行くと会社で払ってる厚生年金と同等の額もくれないんじゃないかなぁとかもしくは〇〇年以上納めてないと満額払わないなんてことが起こるんだろうなと思いました。
まとめると、こうなります。
・20年間は高齢者に有利な政策しか出てこなくなる
ひと言まとめ
最後にひと言まとめです。
でも解消するには子供を増やすしかないけど、子供を増やす政策は作れないから増えない。
だとしたらできることは個人で将来暮らせるだけのお金を国に頼らず準備する必要がある。
書籍情報
【書籍名】上級国民/下級国民
【著者名】橘 玲
【出版社 】小学館 (2019/8/1)
【こんな人におすすめ】上級国民/下級国民の分断がなぜ起こったのかを知りたい人
【キーワード】分断、知能社会、未来の日本
【頁 数】238ページ
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橘玲さん今回もとても面白い本ありがとうございました。
以上です。ありがとうございました。
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